医者は不器用だとなれない?できない?そんな心配に答えます.

医者は器用じゃなければなれない? 医学/医者関連
●医者になりたいけれど,手先が不器用だからなれるか心配.
●担当医の先生が不器用そうだから,手術や術後の処置がどうなるのか心配.

ドクターXのように神業的な人が手術するのでは?だから器用でないと医者は難しい?

もちろん器用であればいいですが,絶対というわけではありません.

医者にはたくさんの仕事があるなかで,『不器用だと医者にはなれないかも』と不安になってしまう方は,医者に興味があり,手術や内視鏡など何かしらの処置に興味がある方だと思います.

主治医や担当医の先生が外科医で自分が何かしらの手術を受ける場合でも,医者が器用なのか不器用なのか気になるところですね.

これらに関して,現在,消化器外科医として現役で病院勤務をしている医師が解説していきます.

医者は不器用だとなれない?できない?そんな心配に答えます.

手の器用さが必要?

医者には手を使わない仕事もある.

職業;医師,医者と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?

患者さんの話を聞いて診断をつけたり, 手術をしたり, その患者さんの一生を見届けたり、、、と様々な仕事があります.

その中でも手を使わない仕事であれば,そもそも器用か不器用かはもちろん関係ないありません.

そういった処置や手術などが全くない科であれば,そもそも気にする必要がありません.

例えば精神科や神経内科などは手技がほとんどない科になります.

医者で器用=手術や処置がうまい?

器用じゃなければ,手術はうまくなれない?

結論を言えば,そんなことはありません.もちろん器用である方がいいですが,器用でなくとも手術や内視鏡などの処置は可能です.上達もできます.

手術や内視鏡というのは,器用さやセンスと呼ばれる類のもので行うわけではありません.

さらに言ってしまえば,器用=手術や処置がうまい,はなりたちません.

手術や内視鏡,その他の処置に関しても,医者はみな初めて行う時がある.

医者が行う初めての処置は採血だと思います.最初は腕などの静脈から採血を行う処置です.

私自身も何度も失敗しました.

研修医時代に研修医同士で採血を行い,試行錯誤を繰り返し,患者さんに行うようになります.さらには上級医の先生もついていることがほとんどで,教えてもらいながら採血をするようになります.

他の処置も同様で,手術や内視鏡なども上級医に教えてもらいながら行い,覚えていくようになります.

その時に器用だったり,センスがあったりするほうが上手なのでは?

確かに最初はそうかもしれません.ただこれは手術といった医療だけではなく,全ての事柄に関して共通して言えることです.

料理をする時に包丁を初めて使って,うまくリンゴをきれるかどうか?裁縫でうまく布を縫えるかどうか?などこういった事柄と一緒です.

そこから練習する人はうまくなりますし,練習しない人はうまくなれない.そういうことです.

世界に通用するようなトッププレーヤーになるには,ある程度の器用さは必要かもしれない.

トップから眺める景色

プロ野球選手で言えば,大谷翔平やイチローのようなプレイヤーになるには努力だけではなく,少しの器用さやセンスなども必要なのかもしれません.

情熱大陸やプロフェッショナルなどといったテレビ番組にでられるような医者になるためにはということです.

ですがそうでなくとも,普通のプロ野球選手(=普通の外科医)になるのは器用さやセンスは関係ありません.

ただ普通と言っても十分にレベルの高い医療を行うことが可能です.

手術にも内視鏡にもいくつもの過程が存在する=手順が決まっている.

順番や手順が決まっている

順序だてて手術や処置ができれば,繰り返すことでうまくなる.

私自身,上手な先生の手術の手伝い(=助手)をすることで,その順序を覚えて,今は自分で手術を行うようになりました.

繰り返しになりますが,手術もいきなり自分ひとりで行うわけではありません.上級医の先輩と一緒にしたり,そばで教えてもらいながらしたりといろいろです.

そして,この病気にはこの手術と決まっており,そこに手順が概ね存在します.その手順を覚えること,その時に先輩の手技をみることなどで,どんどんうまくなっていきます.

要するに,手術や内視鏡は一部の医者だけができるようになっているわけではなく,内視鏡を目指す消化器内科医すべてができるように,手術をしたい外科医すべてが手術ができるように,手順書が存在しているということです.

これが手術だけならばいいですが,仕事は手術以外も当直などが存在しており,激務の中,手術を覚えていかなければなりません.

外科医の仕事は手術だけではなく,多岐に渡ります.

つまり器用でなければ医者になれないは成り立たない.

手術や処置は,その手順や過程を覚えることでほぼどの医者でもできるようになります.

つまり器用でなければ医者になれない,ということは絶対にありません.

ただ消化器内科医にいきなり手術をするように言っても,手術はできません.消化器内科医は内視鏡が専門になるため,その専門の処置はできます.逆もしかりです.外科医は内視鏡はできませんが,手術はできます.

外科医で手術もできる,内視鏡もできる,カテーテルもできる,そういう医者もいるかもしれませんが,それはオールBの能力の持ち主ということです.

手術だけに特化して,そちらに関してはS級の能力を持ち合わせるけれど,内視鏡はE級の能力しかない.今の医者はそういう方向で進んでいます.

ただ自分が手術をしてほしいのは,オールBの医者でしょうか?手術はS級の力をもつ医者でしょうか?

まとめ: 医者は不器用だとなれない?できない?

まとめると,器用かどうかは関係ない.それよりも手順や過程を覚え,一度した失敗を繰り返さないようにするということが大切です.

もちろん失敗というのは,もう手術をやめなければならない,などといったことではなく,ひとつひとつの小さなことです.

小さな血管をきってしまった➡それで出血した.出血量としては2-5mL程度としましょう.次からはその小さな血管をきらないようにする.そういう小さな改善を繰り返して,うまくなっていきます.

これも勉強で,よく言われる医者は一生勉強ということでしょう.

医者になるのには器用か不器用かではなく,勉強し続けて向上し続けることが必要だと考えます.

コメント

  1. yuki より:

    こんばんは
    外科医さんは内視鏡しないって初めて知りました。。。切る範疇は全部外科医さんだって思ってました。ポリープ切るときに焦らないようにしよう
    目がよくて手先器用なのが絶対いいって思うんですがそれも違うんですね。。。切ってもらうなら手術S級の方にお願いしたいです

    • くちゃん くちゃん より:

      ブログを読んでいただきありがとうございます.
      内視鏡,つまり胃カメラや大腸カメラは消化器内科の先生がされることがほとんどだと思います.外科医がするのは手術と腹腔鏡,ロボット手術などです.
      もちろん眼がよくて,手先が器用な方がいいです.ただそれがないと医者になれないというわけではないです.
      S級を求めすぎて,消化器内科,消化器外科,整形外科など,科が細分化されており,それも患者さんにとっては医療を難しくさせているかもしれません.

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