もうちょうの手術をしたら手術の痕ってどうなるの?
手術のあとが残ったら嫌だな.大きい痕だと恥ずかしいし...
このようにもうちょう=虫垂炎の手術に関する説明です.特に手術方法の選択,さらにその手術の選択によって異なる傷のつき方を解説します.もうちょう=虫垂炎に関しては以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてみてください.
現在,総合病院で実際に虫垂炎の手術も行っている消化器外科医が解説します.
もうちょう(盲腸)=虫垂炎の手術痕(跡), 手術選択を解説.
もうちょうは右下腹部に存在しており,右下腹部で手術をする.
もうちょうが存在する真上を切って,手術する方法で昔からよくあった手術方法です.
上記の写真の④,⑤に当たる手術方法です.こちらは開腹手術と呼ばれる手術のひとつになり,最も多くの人が連想される手術の痕ではないかと思います.これは右下腹部の皮膚を切ってしまえば,すぐ下に盲腸と虫垂が存在している手術場所になります.
④の手術の傷跡(=手術痕)としては,丁度下着で隠れる周囲になり気にならないのが特徴です.
⑤に関しては若干下着から出るため,少し見えてしまいます.
それでは,④および⑤の手術の傷跡(=手術痕)になる手術はどうやって選択されるのかというと,その手術を行う消化器外科医の特異なやり方がどちらになるかが焦点になります.この開腹手術は病院や先生によってやり方が異なるため,慣れている手術方法を選択することが多いです.その他の考え方としては,虫垂炎が思ったよりも重症で手術が難しい.そのために傷口を大きくしたい!となる場合は,⑤の手術選択の方が傷を延長しやすいので,そちらを選択します.
⑥のように10 cm 以上の大きな傷がつく場合はどうなる?すごい痛そうだけど.
こちらのケースは最初から虫垂炎の手術が難しいと判断する場合や高度の癒着が想定される倍などに限って行います.できる限りこの手術痕になる手術選択は行わないようになってきています.
I) 虫垂炎の開腹手術の選択は,④or⑤のどちらかであることがほとんど.
II) ④or⑤の選択に関しては,手術する外科医の特異な方になる場合が多い.ただ手術が難しい場合は⑤の方が,傷を大きくしやすい.
III) ④の手術痕は,下着のラインに当たるため気にならないことが多い.
IV) ⑥の手術痕は手術開始前から,高難易度(=炎症が激しい,癒着が激しい)が予想される時.
手術の痕(跡)が小さくなる腹腔鏡手術.
近年では,傷の小さな腹腔鏡を用いた手術が主流になってきています.そして腹腔鏡でも,様々な手術方法があり,その中の3種類をご紹介します.
この腹腔鏡手術はいずれも『へそ』を切る手術になるため,『へそ』の形が手術の前と手術の後で若干異なると思います.もちろん消化器外科医は,へそが変形しないように縫合を心掛けてはいます.
また手術後の痛みに関してはどれも腹腔鏡は少ないと言われています.しかし,痛みに関しては個人差もかなり大きいと言わざるを得ません.
腹腔鏡手術①;単孔式での腹腔鏡手術
上記写真の①の方法です.へそを切開し,その小さな3-5 cm 程度の穴から手術を行う方法です.メリットとしては,皮膚に最も傷をつける箇所が少ないため手術の痕(跡)が少ないということです.ただへそだけなので,デメリットとして他の腹腔鏡手術の方法と比較してやや手術が難しくなることがあります.
私自身の場合,この手術方法を選択するのは,患者さんがどうしても手術痕(跡)が残らないようにしてほしいという希望がある際に行う手術方法です.
腹腔鏡手術②・③:手術痕が3か所残るような腹腔鏡手術
へそとそれ以外の2か所に1 cm程度の手術痕(跡)が残るような手術方法です.へそ以外の2か所の手術痕(跡)の場所は,病院や外科医によって異なります.
腹腔鏡手術①は手術操作できる場所が1か所しかないため,手術が難しくなりがちです.そのため,手術操作できる場所を3か所に増やすことで手術を行いやすくしたのが,腹腔鏡手術②・③になります.メリットは手術操作が腹腔鏡手術①:単孔式よりも行いやすいことがあげられ,デメリットは腹腔鏡手術①:単孔式よりも傷のつく箇所が多いということです.ただそれでも非常に小さな傷ですので,多くの方は気にならないといわれます.
腹腔鏡手術②・③に関しては,虫垂炎がひどかった場合は1 cm程度の傷から出ないため傷を大きくせざるを得ない場合や虫垂をちゃんと自分の眼でみて縫い閉じたい手術を行いたい場合,などによって変わってきます.しかし,それほどまで大きな違いはありません.
I)腹腔鏡手術の方が,開腹手術よりも手術痕(跡)の残りは小さいことが一般的.
II) 腹腔鏡手術①が最も手術の痕(跡)が目立たない.しかし手術の難易度はあがる.
III) 腹腔鏡手術② or ③はスタンダードな手術方法.傷の位置は病院や外科医によって異なる.
もうちょう=虫垂炎の炎症が強すぎると,もう一か所傷がふえることもある.
虫垂炎の炎症がひどすぎて,お腹の中が膿だらけになっている場合や出血などの情報を管理したい場合にお腹に管を1本入れて手術を終了することもあります.そうなると手術痕(跡)はもう一か所増えます.
『ドレーン』と呼ばれる管を体に入れて手術が終わることもあります.そのドレーンはいずれ抜いてしまうのですが,ドレーンを入れるためにどうしてもお腹に傷をつけなければなりません.そして,そのドレーンは盲腸や虫垂の近くにおいて手術を終わりたいため,右側腹部付近に入れることが多いです.そのため,そちらにも1 cm程度の傷がつく可能性があります.
【まとめ】もうちょう=虫垂炎の手術痕(跡):開腹&腹腔鏡,その選択
もうちょう=虫垂炎の手術の痕(跡)やその選択する理由などをまとめてみました.やはり近年では開腹手術よりも腹腔鏡手術がメインになってきており,腹腔鏡手術②・③が多い印象です.そしてその手術方法を選択する理由はさまざまです.
ただ消化器外科医としてはひとつの手術方法に固執するのではなく,ひとつひとつの症例に応じて適切な手術方法を施行できることが望ましいと考えます.この①~⑥のパターンまでいずれもマスターしなければなりません.
患者さんとしては,この様な背景に基づいて手術方法を選択していることを知り,そして自分はどう望んでいるのかを医者に伝えられることができればと思います.
今回は以上になります,少しでも皆様のお役に立てれば幸いです.
手術全体に関してもう少し詳しく知りたい方は以下の記事も参考になると思います.
コメント
こんにちは
腹腔鏡3点で手術しました。おへそのかたちが変わるなんて気が付かなかったです
左腹のところはすこしずつ薄くなってきました
子宮筋腫がじゃまして術野がとりにくかったはずなのですが、開腹にならなかったので外科医師に感謝です
いつもブログを読んでくださりありがとうございます.遅くなって申し訳ありません.
開腹にならず小さな傷で喜んでいただけたなら,その先生も嬉しいと思います.
私もできるだけ開腹手術にならないように励みます.