【外科医が思う手術】手術≠治す,手術≒取り除いて補う.手術は怖い.

外科医が思う手術とは?手術は怖い医学/医者関連

病気になったから入院して手術せんにゃいかん!手術すりゃ,もと通りになって帰ってこれるよ

手術は治療方法として完全に治し切る側面もある一方で,非常に怖い側面も持ち合わせてます.

手術をすれば元通りにするものと考えられている方,手術ってすれば終わりだと思っている方など手術について疑問がある方に向けて書いています.


日々の診療の出来事を交えながら,一般の方にもわかるように説明したいと思います.また過去の記事で,「外科医は道路整備士である」という記事を書かせていただきました.

外科医は道路整備士ですが,新しい道路を作ることはできません.最初から存在する道路を工夫して再度通れるようにするしかできない,弱点も持った整備士です.

以下にリンクを貼っておきますので,併せて読んでいただければ,さらに理解が深まると思います.

現在総合病院で消化器外科医として働く現役医師が解説します.

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【外科医が思う手術】手術≠治す,手術≒取り除いて補う.手術は怖い.

手術室

手術すれば今まで通り!もと通りになる?

手術したらもと通りになると思って,手術したらって進めたのに、、、.なんかよくなっている気がしない.

手術した後の患者さんを見て言われたご家族のひとことです.(医療現場のこそこそ話としては,特に手術の説明を聞きに来ることができなかった家族の方が言われることが多いです.)

我々外科医は手術の前に必ず『手術の説明』を行います.患者さんの病気ついて,なぜ手術をするのか?手術の方法,手術合併症,手術後の合併症などを説明します.

この時に,私自身が強調してお伝えしておくのは,

手術は病気を治すために行うのは当然なんですが,手術をしたからと言って,もと通りになるわけではありません.

手術して,もと通りになるのであれば手術という治療法はどんどん行われるべき治療法だと思います.

ただ手術は治すために,取り除くことしかできません.取り除いて,新しい臓器をとりつける.そんな治療法はまだ確立していないのが現状です.

手術で取り除いた臓器がにょきにょきと生えてはこないので,残された臓器でなくなった機能を補うしかないのです.

胃をとれば胃の機能は落ちる,膵臓をとれば膵臓の機能も落ちる

例えば,胃癌になったとして胃をとる手術を行います.専門用語でいえば,幽門側胃切除,胃全摘などの術式になりますが,どちらも胃をとる手術です.

胃を取ってしまうため,胃の機能は落ちます.

幽門側胃切除にせよ,胃全摘にせよ,どちらも胃から十二指腸へ続く通路を切るため,蠕動(食物を肛門側へ運ぶ力)は落ちます.

さらには胃袋というぐらいですから,「袋」として食物を蓄える能力もあります.

小さな袋と大きな袋では大きな方がより蓄えられます.

胃を切る=蓄える能力も落ちる=ご飯を食べられる量が減る.

このような一連の流れが生じます.

胃のイラスト
胃の代表的な手術(幽門側胃切除)は胃を2/3切除する
残る胃と切除する胃
残る胃の機能しか残らない

膵臓の手術にしても同様になります.膵臓は「糖尿病」と呼ばれる血糖値の病気に深く関わっています.

膵臓の手術をする=膵臓を取る➡膵臓の機能➡手術の後に糖尿病になることもある.

手術後に糖尿病になるか,ならないかは残った膵臓の機能でどの程度まで補えるかによります.

●手術すれば今まで通り!もと通りになる?●
手術は臓器そのものを取り除くことで,治す治療法.なくなった臓器の機能は元には戻らない.
残った臓器で機能を補ってもらうしかない.

ですから,胆嚢や虫垂といった無くなっても大きく困らない臓器は,手術して治療を行うことが今でも治療法として存在しています.

手術は怖い.手術には必ずリスクが存在する.

崖の上から落ちていく男性

手術を選択する=もと通りにはならない可能性もある.

手術をすることは,もと通りにならないこともあります.患者さんとして一番怖いのは『思っていたのとは違う』ということだと思います.

例えばお腹の手術であれば以下のリスクが必ず存在します.

お腹を開ける

お腹が空気に触れて,癒着する(臓器同士やお腹の壁に癒着します)

癒着が完成する

腸閉塞になりうる

この合併症が必ず存在します.お腹の手術をするならば,癒着のリスクを取らなければなりません.

癒着って?

消化器外科医はお腹の中の腸などを手術する科です.腸というのは一方通行の道路に他なりません.

つまり『癒着』とは道路で説明すると『道幅が狭まる』ということです.道幅の狭くなり方によって,起きうる合併症も微妙に異なります.

  • 二車線あるったものが,一車線になるのか?
  • 完全に交通止めになるのか?
  • 崩れてしまうのか?
  • 道路がねじれてしまうのか?

特に崩れたり(消化管穿孔),ねじれたり(絞扼性腸閉塞)すると再度手術をするしかありません.

これは道路であっても同じです.二車線あってスムーズに通過できていたけれど,それが一車線になる.渋滞はするかもしれないけれど,いつか通行できます.

崩れた(=消化管穿孔)場合は長期間通行止めになり,その道路事態を工事してもらう必要があります.

交通止めになると,長い長い渋滞ができてしまいます.これがお腹の中で起こったのが腸閉塞です.

手術は必殺技に近い.

手術は癌を取り除く,感染症を治すなど一撃で病気を改善する方法です.しかしながらリスクも必ずついてきます.

ドラゴンボールの界王拳と同じです.界王拳を使うことで,敵を倒す可能性を高める.その一方で体力をごっそり持っていかれ,体を壊すリスクがある.

手術は気を高めるわけではないですが,病気を治す可能性を高める.その一方で,もと通りにならないリスクもある,ということです.

手術は怖いからしない方がいい?

手術をする外科医

手術は怖いけれど,勇気を持って飛び込まなければ治らない時もある.

外科医の眼から見ても手術は怖いです.手術というのは100例あるうちの99例は成功することが多いですが,どうしても1例には合併症が生じるからです.

手術は100%ではないということです.しかし,これだけ手術は怖い,怖いと言っておきながら,手術をするしかないそんな状況もあるわけです.

お腹が痛くて痛くてたまらない.

盲腸ですね,手術をする方法としない方法があります.ただ私の家族であれば手術しましょうと言います.どうされますか

こんな状況にいきなり立たされるわけです.この時にリスクを取らなければ,痛みはなくならないわけです.

手術は怖いけれど何ともないという人も多い.

もう手術は怖いからしたくないよ.

ただ手術後には何ともない,今までと一緒だという方も大勢います.

胃をとったけれど,いままでとそんな変わらんね

大腸とって最初は下痢していたけれど,今は特に何ともないね

こんな方も大勢いるのが実情です.これも手術をしてみなければわかりません.

病気は嫌なこと.手術も嫌なこと.ただいつか来るかもしれない時に.

月明かりの怖い夜を歩く男性

人間,嫌なことは敬遠しがちになる傾向がある.

あの人病気になったんだ.でも私は今は大丈夫だし,違う.何ともない.

病気に関しても,病気になる前から細かく調べる方はいないと思います.それ以上に,手術した後にどうなるのだろうと手術をする前から調べる方は少ないと思います.

病気・手術に関してもあらかじめ知っていてほしい.

でも,知っておいてほしいのです.手術はいい側面もありますし,悪い側面もあります.

私たち自身,どんなにいい手術ができたと思っても,合併症が起きてしまう人もいます.

悪い側面も知っておいてほしいのです.手術をしても,その体はあなただけのものですから.

外科医が思う手術.手術は怖い:まとめ

散々手術の怖い話をしてきましたが,もし病気になったら我々が全力でサポートします.少しでも生活をよくするために一緒に寄り添って,立ち向かっていければと思っています.

病気を克服し日常生活に戻る,そのために私たち外科医は手術を勧めます.

手術に興味がある方,手術しなければならない方,身内に手術した人がいる,知識として知っておきたい,そんな方の少しでもお役に立てれば幸いです.

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