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【外科志望でない研修医は本・教科書不要】外科研修について解説.

外科研修.教科書は基本的に不要. 医学/医者関連
・研修医として外科研修が始まるけれど,どんなことを勉強しておけばいい?
・外科研修でお勧めの本や教科書がわからない.そもそも教科書っている?
・外科研修あるけれど,外科医になるつもりは正直ない.

このように考えており,これから外科研修をしようとしている方に参考になれば幸いです.

私自身は今現在,消化器外科医として勤務しています.しかし,研修医の外科ローテーションの時は整形外科志望で,興味がない!それが本音でした.実際,外科研修した時に本や教科書は買っていませんでした.

【外科志望でない研修医は本・教科書不要】外科研修について解説.

手術の勉強?No!!

外科志望でない=外科研修は受験で言う非受験科目に当たる.

結論を申し上げますと外科研修で本や教科書を買って,手術の勉強をする必要ありません.

医師になるためには医学部受験が必要です.その大学受験の時に世界史,日本史,地理と社会の科目がありますが,日本史で受験する人が世界史を勉強するのは非合理的です(もちろん勉強すること自体は素晴らしいことです).

世界史の勉強をいくら頑張ったところで,自分の知識の向上や他人からの称賛は得られるかもしれませんが,『合格』という目標に対しては1 mm も近づきません.

外科に関しても同様です.将来的に内科医になる人が,外科の研修で本や教科書で手術の勉強をするのは世界史を勉強するのと同じことです.たかだか,1 or 2か月の研修期間で手術の勉強をしても得られることは,雀の涙です.

これは決して『外科研修は手を抜いて気軽にやろう.』と言っているのではありません.

効率的かつ合理的に研修する方がより楽しい外科研修になる.と考えています.

本や教科書で外科の手術の勉強をしてもわからないことも多数.

実際の外科を回ってみるとわかると思いますが,本・教科書と実際の外科研修は異なることが多いんです.

有名な外科の教科書,【イラストレイテッド外科手術】.外科を目指す研修医には非常に勉強になる教科書と感じていますし,私自身勉強した教科書でもあります.

ただ注意してください.将来外科を目指さない方に,買うのを積極的にはおすすめできる教科書ではありません.

例えば,本書の中に膵頭十二指腸切除という項目があります.さらにはその手術工程が細かく書かれています.この手順を勉強して手術に入ってくれることは,消化器外科医としては非常に嬉しいことです.ただ研修医の皆さんが実際に手術に入ると,

『今はどの手順・工程なの!?わけわからない.教科書と違う.外科って難しい』

こんな思考回路になってしまいかねません.外科の手術は病院ごとにバリエーションがあったり,先生ごとに方法が微妙に異なったりするため,本・教科書通りにいきません.

外科の研修で本や教科書が不要な理由は,その勉強通りに実臨床は行われず,あくまで1例であるからです

外科志望でなければ,本や教科書ではなく,実臨床の中でつかむで十分.

私が重要だと考えるのは,『外科研修,特に手術に関しては要点のみを抑えて,それ以外のことを中心に学んでいく』.これに限ります.

これからの医師人生の中の共通項を学んでいく,そんな研修期間にすべきです.

【外科志望でない外科研修】要点を考えた研修

鑷子や受針機

日常生活で考えると,消化器外科医は道路整備士です.この概念を忘れずに以下のポイントを抑えて研修していただければと思います.

要点をおさえた研修①:手術ではなく,術後管理に力を注ぐ研修.

『手術』というと難しく聞こえますが,手術や外科医が道路整備と考えれば実際に目にしたこともあり,馴染みが湧きやすいのではないでしょうか?

例えば1, 2年目の道路整備士が美しい道路を作るのは難しいと思います(道路整備のことは詳しくありませんので,違った場合は申し訳ございません).これと同様に1,2年目の研修医が手術を全て理解し,実際に手術をする,これは難しいでしょう.手術をしたとしても【ここほれわんわん】状態です.

しかしながら,術後の点滴量などの水分管理(volume管理)を考えたり,ドレーンの色を確認したり,リハビリとして患者さんと一緒に歩いたり,と術後管理は1,2年目からでも充分に可能です.

手を出しやすいことが多い術後管理.だからこそ術後管理を徹底的する.手を出しやすいぶんに学ぶことも数多くあるはずです.こちらを中心に勉強していきましょう.

術中,術後の観察ポイント

道路整備した後は,その道路が壊れることなく,通過できるかどうかが大切になります.消化器外科の手術もこれと同様です.

例えば大腸切除をして,大腸と大腸をつなぐのであれば,そのつなぎめがきちんと脇漏れすることなく,食事が通るのかを観察します(縫合不全の観察).

手術中は①どの臓器とどの臓器をつないだのか,②何か所つないだのか,を見ておきましょう!

以下に具体例を紹介しておきます.

★膵頭十二指腸切除術★
①膵臓と空腸 or 膵臓と胃 の吻合
 この吻合がうまくいかなければ,漏れるのは膵液(膵瘻:pancreatic fistula).
②胆管と空腸 の吻合
 この吻合がうまくいかなければ,漏れるのは胆汁(胆汁漏:bile leak).
③十二指腸空腸吻合 or 胃空腸吻合
 この吻合がうまくいかなければ,漏れるのは胃液 or 腸液です.
★幽門側胃切除★ or  ★胃全摘★
①幽門側胃切除の場合は再建方法が大きく3種類ありますが,漏れる内容物は変わりません.
 胃と空腸or十二指腸を吻合する:縫合不全が生じれば,胃液 or 腸液が漏れます.

②胃全摘 
 胃と空腸を吻合する:縫合不全が生じれば唾液 or 腸液が漏れます.

★大腸切除★
場所によって術式は様々ですが,大腸と小腸 or 大腸と大腸をつなぎます.
縫合不全が生じれば,腸液 or 便 が漏れます

術後管理はそれぞれの臓器のつなぎめが,どうなっているのかを毎日観察することです.

縫合不全がある=腹腔内が汚染される=感染症が発生する,この一連の流れを追っています.感染症になってしまえば,どの科でも行う感染症の管理と同じです.術後管理はその練習であると考えていただければと思います.

縫合不全➡感染症になってしまった,その腹腔内の感染を抑えるためにどうすればいいのか?を考える練習になると思います.

要点をおさえた研修②:手技の観察

陶芸を行う職人

腹腔内に感染症が起きた場合,外科医は基本的にドレナージしよう!と考えます.つまり,道路下に新しいクッションを入れて道路が崩れないように支えて待つ!そんな状態を作り出すわけです.このドレナージの際には必ず手技があります.

全身状態が悪ければ,腹腔穿刺,胸腔穿刺,CV挿入などさまざまな手技を一気に行うこともあります.

いろんな道具を使って行い,ドレナージのカテーテルの種類がたくさんあるため,『何それおいしいの?』なんて状態に陥りますが,覚えてほしいのは以下の通りです.

  • 使う前の操作は毎回一緒!(清潔操作)
  • 大腿の採血を片手でする or エコーを当てる時の左手の動きはどう動いている

これはどの科でも使用する手技です.私が思うに手術は手技の塊です.CV挿入はもちろん,腹腔穿刺,胸腔穿刺等の手技は基本中の基本です.その手技を常に行っている人から自分がやる可能性がある手技を見ておく外科研修で手技を観察することに重点を置く!

これは自分自身の手技の上達が早い方法ではないでしょうか?

要点をおさえた研修③:救急外来に一緒に行く

運ばれてくる救急患者

手術するお腹を実際に一緒に診察する.

外科医が救急外来に呼ばれる=手術になりそうな症例=手術になりそうな腹部所見.これをまじかにみれるチャンスです.

ただ外科医は次の日の手術を考えたり,術後の管理で次はあの手技をしたりとか動き回っています.つまり忙しいので,『教えてください』とはなかなか言い出せない人もいると思います.それゆえに,事前にひとこと言っておくといいと思います.

救急外来に行くときは一緒に行きたいです!!行くときは電話してください!!』

こう言われて研修医を置いて救急外来に行く外科医は,よほど忙しすぎて忘れてたか,とんでもないろくでなしです.

救急外来で手術するお腹を見たならば.

一緒に救急外来に行ったら,お腹が固いかどうかをどう診断しているかを見る.

お腹の固さの判断?まぁ、触った数だね.要するに経験だね.

上記のように言われる外科医も当然いますし,確かに経験は大切です.ですが,お腹の固さを自分自身でどう診断しているのかを診て,自分自身の言葉で言語化してインプットする.これが非常に大切だと考えます.そうすれば,次回救急外来で同じ疾患に出会っても,自分自身でアウトプットして診断可能になると思います.

例えば,虫垂炎に関しては指1本で痛みのポイントや硬さの場所が変化する,など言語化しておくことで今後の外来での成長をかなり見込めます.ほかにも板状硬や反跳痛などの身体所見は実際にどういう状態なのかを,言葉で説明できるようにしておくことが非常に重要です.

いつか自分1人で診察しなければならないその時のために,言語化して知っておくことは有用です.

外科志望ではない研修医のためのまとめ

①外科の研修に本や教科書は不要.特に手術書は不要.👈教科書と外科の実臨床の場は異なることが多い.
②要点を押さえた研修期間にする.
・術後管理に力を注ぐ.👈感染症やvolume管理などの全身管理を勉強する.
・手技を観察する.👈将来自分が使いうる手技があれば,徹底的に観察.
・救急外来へ一緒に行く.👈手術になるお腹を実際に触れ,自分自身の言葉でインプット.

終わりに

研修医の先生が一緒についてまわる外科医は若手の外科医が多いと思います.若手外科医は仕事が大量に存在します.手術,病棟管理,論文,学会と忙しくなかなか教えてもらう機会も少ないと思います.

ゆえに,自分から教えてください!と来なければ,必要最低限しか学べないと思います.

少しでも実りのある外科研修になれば幸いです.

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