ドラマとかでよく見る凄腕の医者って手術ばかりしているイメージ.
論文はかかないのかな?
手術がうまくなると論文作成、、、は『致しません!』になる?
このような医者の論文事情に関して説明していきます.
確かにドラマなどでは手術が大きくクローズアップされ,論文作成に視点が当たることは少ないように感じます.
現在も消化器外科医として病院で勤務し,手術,外来,論文作成などを行う現役医師が解説します.
結論を先に言ってしまうと論文を書かなくなる医者が多い,というのが実情だよね.
医者は論文を書かない?書かなくてもよい?手術だけでよい?
医者が論文を書く理由.
そもそも医者がなぜ論文を書くのか?
論文を書く=周囲の人にこういうことがあったよ,こういうデータがでたよ,と伝えるため.
になります.
論文を書くことで,自分の診察していない誰かの役に立つことを期待して論文を作成します.
この患者さんの状態は珍しいから,あんまり経験したことないなー.
少し論文を検索してみるか.
このように論文を検索して普段の診療に役立てることもしばしばあります.
論文を作成するとそれが日本語であれ,英語であれ,『PubMed』のようなサイトで閲覧可能です.
論文で語られるデータが膨大であり,正確であり,日常的に使える情報であれば,ガイドラインなどに組み込まれます.
ただこういった論文は組織で臨床試験が組まれていることがほとんどです.
医者が論文を書かかない理由
誰かに伝えるためって聞くと,すごくいいことに聞こえて論文をかかない理由はなさそうだけど.
残念ながら,そんな論文を書いたとしても,誰かから評価されることは稀です.
論文書くのも無料ではできなくて,高ければ10万円以上かかることもあります.
そんな論文を書いても1円にもなりません.
そしてこれからは『自己研鑽』と呼ばれる自分の好きでやっている仕事に分類され,全くの時間外もつかない仕事になりそう.
要するに,論文を書くのは労力がかなり必要で,それをしても誰かから褒められるわけでも,感謝されるわけでもなく,そしてお金がかかるだけ,ということです.
具体的に解説していきます.
医者が論文を書かない理由①:書いても評価されない
論文を書くことで誰かのためにはなるけれど,目にみえる評価はされません.
論文を書いたら,同期や先輩たちからすごいな!とかがんばってるな!と言われる程度です.
特にそれ以上の評価はありません.
医者の人事を決める【医局】に所属している医者は,その論文に応じて評価されることももちろんあります.
いい人事を回してもらえたり,優先的に配属先を聞いてもらえたり.
ただそうかといって,実際の目の前の患者さんは自分の論文とは関係なく,手術の実力だったり,術後の管理だったりが重要になってきます.
患者さんから感謝されるのもそういった『臨床能力』に左右され,論文作成ではありません.
論文を書いても,目にみえて得られる対価が少ないことが論文をかかない理由のひとつでしょう.
医者が論文を書かない理由②:書くのにお金がかかる.
英語で論文を書くと,その書いた論文の英語が正しいのかを添削してもらう必要があります.
日本語で論文を書けば,基本的に添削は上級医などにお願いします.
しかしながら英語になると,英語の文法が正しいか?意味が正しいか?などをnativeに添削を依頼するのが通常です.
この依頼に関してはお金が発生し,安くとも1万円程度です.
たかが1万円,されど1万円です.
添削するのにお金がかかるだけでなく,論文掲載料も必要な場合があるよ.
論文を投稿するのも,いろいろ種類があります.漫画で言うと集英社や小学館などです.
これは多くが学会が運営していますが,その学会に論文の掲載をお願いし,料金を払わねばなりません.
高い場合は10万円を超えることもあります.
そしてこれらは大学病院などでない限り,自費で負担することになります.
論文1本書くだけで10万円以上かかるって,書けば書くほど貧乏になる…
わたしたち医者も人間でお金は大切です.
10万円を払い続けて,評価もされない.それならやる気はなくなっていきます.
医者として頑張れば頑張るほど給料が減っていく,,,完全に謎です.
医者が論文を書かない理由③:自己研鑽とみなされる.
医者も働き方改革が進められています.そんな中で,時間外労働なのか?それとも自分のスキルや知識を高めるための時間=自己研鑽なのかが定められてきています.
会社に残って,仕事しているのに,自己研鑽??
論文は仕事ではなく,あくまで自主的に行うことがほとんどです.病院としては別にやらなくてもいいことになります.
自己研鑽は時間外労働とはみなされません.
つまり医者として知識をさらにつけよう,手術をもっとうまくなろう,このように学習しても時間外労働にはならない,ということです.
頑張っても頑張っても給料は変わらず,さらにはプライベート・家庭の時間も減る.
自分のお金,時間を犠牲にし続けるのは厳しく,それゆえ論文をかかない医者も増えてきます.
下は1年前の記事ですが,医者の働き方改革についてです.参考にしてみてください.
論文を書かない医者がかっこいい?手術だけでよい?
ドラマのように論文を書かない,手術だけすることがかっこいいにはつながらないと思います.
ドラマでは手術のようなダイナミックさがある医療に照準を当てた方が,視聴者を楽しませますので,そちらを優先した形になると思います.
論文に焦点を当てても,難しい統計の言葉の連発で楽しめる人はほとんど少ないでしょう.
論文を書かないと『専門医』を取得できないこともある.
論文をかかないと,自分の専門の科を認めてもらえない場合もあります.
若手医者の多くは専門医取得を目指して,日々の診療を頑張ってもいます.
その専門医を取得するのに必要な論文を書くことは多いと思われます.
最低何個論文を書いていないと,専門医として認めません,と定めている学会もあります.
その取得のために,どうしても書きたくないけれど書く医者もいると思います.
論文を書かないのは得られる対価が少ない.書くことで得られるものも
上にも示した通り,論文を書かない・書かなくなるのは得られる対価がほとんどないからです.
もちろんビッグデータを用いた論文は,世の中の治療方針を変える可能性もあるため,自分自身が治療方針を決めた!という対価が得られます.
しかし,そのようなビックデータを用いた論文を書けるのは,大学病院やがんセンターと言われる超巨大病院または組織しか難しいです.
それ以外の病院は,『症例報告』と呼ばれる1例の珍しい症例を論文にすることが多いです.
『症例報告』になると得られる対価は少ないです.
そんな中でも得られるものもあります.その症例について詳しくなるため,知識量のアップになります.
そしてその症例報告を積み重ねることが,日々の診療の疑問を減らすことにもつながります.
自分自身のスキルアップにつながるということですね.
ただスキルを上げたところで,給料があがるわけではないのは前に述べた通りです.
医者は論文をかかないについてまとめてみました.
参考になれば幸いです.
論文をかかないで思いつたドラマで考えられるのは『御意』でしょう.こちらも参考にしてみてください.
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